三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉

春めいてきたこの季節によく聴かれる三寒四温。その意味と実際を天気図でご紹介します!
キーワードは”波”です!!

三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉
-意味と時期-

3月になって北日本以南では春めいた日が徐々に多くなってきましたね。
三寒四温をWikipediaで見てみると、こんなことが書いてあります。

三寒四温とは冬季に寒い日が3日ほど続くと、そのあと4日ほど温暖な日が続き、また寒くなるというように7日周期で寒暖が繰り返される現象。朝鮮半島や中国北東部に典型的に現れる現象で、日本でもみられる。一般に寒い日は晴れで、暖かい日は天気が悪い。日本では本来は冬の気候の特徴として使われたが、最近では春先に使われることが多い。

元々は冬季の言葉だったようですね。
最後の一文でわかるように、最近になって春先の言葉として使われるようになったようです。
特に3月に頻出する言葉で、小学校の四字熟語なんかでもよく出題されている言葉でもあります。
でもここで見られるような、
「7日周期」
「寒い日が晴れ」
「暖かい日が天気悪い」
というのはピンと来るような来ないような…。
というわけで気象データで三寒四温の意味と実際を考えてみたいと思います。

三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉
-気象データで考察-

今回使用するのはWindyの気象データです。
様々な気象データを参照することが可能です。
今回は降雪の予報でも使われる、上空1500mの気温がどのように変化していくのかを予報しているデータを使ってみていきたいと思います。
(データは2021年3月2日0:00~のものを24時間周期で使用)
上空1500mの気温を使用するのは、
・地表の気温の影響を受けにくく、地形による影響を受けにくい
・上空の空気の流入から気温を予想しやすい
・寒冷前線などの前線の形成を予想するのに使いやすい
為、このデータを採用しています。もう少し上空や低空のデータでも良いのですが、上記のバランスが優れているという点で採用に至りました。
また1500mの空気が地表に降りてくると、1500mでの気温に10℃プラスした値になりやすい(地表の影響などもあるので一概には言えませんが)というのも一つの目安になります。
例えば1500mでのある地点の気温が10℃ならば、地表は20℃前後になる可能性が高い、といった具合です。

では見ていきましょう。

三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉
-3月第1週のデータ-

▲21年3月2日0:00のデータ

この段階では関東地方は6℃。
ここで注目したいのは、青森近辺までで切れている緑色のゾーン(気温0℃線)が、大きく入り込むような形になっている点、
また朝鮮半島から西にかけて、その0℃線が大きく南下している点です。
総合すると、大きな”波”のようにも見えます。この”波”が三寒四温を招く原因なのです。
この波に注目しながら時間を進めて予想図をみていきましょう。

▲21年3月3日0:00のデータ

24時間進むと、先程見ていた青い線が南下していたゾーン(=波)がそのまま東進してきて関東近辺の上空1500mは―1℃に。
因みに濃い青は0℃~‐5℃のゾーンで、薄い青になると降雪目安の-6℃になりますので、また北陸以北は降雪の可能性が出てきそうです。
尚、紫に近づくと―15℃になってくるので、北海道地方や以北の寒さのレベルが段違いですね。

▲21年3月4日0:00のデータ

時間が進むと、この波の寒いエリアもドンドン東進していき、関東地方はここで最も気温の低い―5℃のエリアに囲まれます。
しかし、西日本では既に0℃以上に温かい空気(緑色のエリア)が入ってきていて、また温かくなりそうな気配を見せています。

▲21年3月5日0:00のデータ

5日になってもまだ寒いエリアが関東地方には残ると予想されていて、まだ―2℃。関西以西は徐々に温かくなろうとしているようですが、
この寒気は中々頑固のようですね。

▲21年3月6日0:00のデータ

6日になるとようやく温かい空気に関東地方も囲まれます。
この日の温かい空気(緑色)のエリアも、2日同様、北方向に入り込むような形になっています。
2日に比べると波の具合は緩やかになってきていることも注目ポイントです。

▲21年3月7日0:00のデータ

7日になると温かい空気から間もなく冷たい空気に移り変わろうとしていることがわかります。6日の日中が2日以降では最も暖かくなる1週間になるかもしれません。
日本列島の太平洋側沿岸に並行の形で0℃線が走っています。
6日と7日の気温の差は大きいでしょう。

▲21年3月8日0:00のデータ

8日になるとまた関東地方は‐6℃。
7日の日中はやはり少し寒そうですね。
8日の寒気と暖気が形成する波は4日の形に少し似ています。
波打つような寒気と暖気が早いペースで東進してくることがわかります。

▲21年3月9日0:00のデータ

ここでもやはり少し寒気が頑固なようですぐには東進していきません。
また日本の東から西にかけて大きな寒気の塊になっているようにも見えます。
一方で、中国中央部からキルギスにかけての広範囲で暖気が形成されています。
この暖気の範囲が2日と比較して徐々に大きくなっていることも注目点です。

三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉
-3月第1週の周期について-

こうして見ていると4日と8日の形が似ていることから、
4日間が1セットとなって天気が変動していると言えそうです。
また、寒気の移動が暖気の移動と比べて遅い為、
寒→寒→やや暖→暖→…
と寒い日が少し多めになりそうです。

こうして寒気と暖気の波が上空で形成されており、
その波が東進することで寒い日と温かい日が一定の周期でやってくることになります。
3月の第1週は概ね「関東では寒気と暖気が五分五分、または、やや寒気が優勢」となりそうな周期です。
そして3月2日と9日の暖気の範囲を比較すると広がっていることからわかるように、季節が進むにつれて徐々に暖気の範囲が広くなって温かい日の周期が長くなることになってきます。よって3月2週目からは「関東では寒気と暖気が五分五分」になってきそうです。

三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉
-前線と注意点-

これだけ寒気と暖気が入り組んでいると、日によって寒暖の差が大きくなり、当然体調管理は難しくなります。
同時に、この0℃線に並行な寒冷前線をはじめとした前線が形成されやすくなります。
これは、寒気と暖気がぶつかることで寒気が暖気の下に潜り込み(=暖気が寒気の上に上がっていき)、水分を含んだ暖気が上空に行くことで雨雲となることを意味します。


寒冷前線を単純にイラストにするとこんな感じです。
図の右側にいると暖かいのですが、そのすぐ隣には寒気と雲がいることになります。
また、この寒気と暖気の勾配は概ね1/80程度(1/50~1/150)と言われており、温暖前線と比較すると勾配は急です。
今回参照したデータが1500m上空のデータなので、ものすごく簡易的にモデル化すると、
1500m上空に雨雲が出来たとしたら、(今は暖かく安定した天気でも)1500mの80倍=12㎞先の雲がやってくると雨が降る可能性がある…とザックリ言えます。
寒気と暖気の東進スピードによってこの12㎞先の雲がどのぐらいの速度でやってくるかを判定することが出来ますね。
1500mに雨雲がある、はかなり簡略化した数字なのでこの計算もザックリになってしまいますが、おおよそ
「寒冷前線があるときは急に雨が降ってくる可能性がある」
ぐらいに思って頂ければOKです。

この簡略化したイラストとこの計算から導き出されるのは、
「暖かい日だったとしても、急に雨が降ってきて寒くなる可能性がある」
ということです。

このことから、先程のWikipediaの表記も的を得ていそうです。

三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉
-3月第1週の予報と答え合わせ-

3月第1週ではまだ「7日周期」とまではいきませんが、
寒気と暖気が作る”波”によって、ある程度の周期の中で寒い日と暖かい日がやってくることは確かなようです。
7日周期になるのがいつなのかは今のところわかりません。
が、地球温暖化の影響なのか、キレイに7日周期になる期間はあまりなく、急に暖かい日だけが続く…なんてな風になるのが近年の傾向な気がしています。

また「寒い日が天気良く」「暖かい日が雨」も寒冷前線の構造上、あり得そうです。
3月2日気象庁発出の東京の天気予報を参考にしてみると、
3月2日:曇りのち雨(最高17℃最低13℃)
3月3日:曇りのち晴(最高13℃最低4℃)
3月4日:晴れ時々曇り(最高13℃最低4℃)
3月5日:曇り(最高15℃最低8℃)
3月6日:曇りのち雨(最高17℃最低9℃)
3月7日:曇り(最高12℃最低5℃)
3月8日:曇りのち晴れ(最高11℃最低4℃)

と予報しており、気温の高い日が雨で、低い日が晴れの傾向は今週もありそうです。
また暖かい日よりも寒い日のほうが割合としてはまだ多そうですね。
では実際に東京の1週間の天気がどうだったのか、答え合わせをしてみましょう。

3月2日:雨(最高19.8℃最低12.6℃)
3月3日:晴れのち曇り(最高11.8℃最低3.8℃)
3月4日:晴れのち曇り(最高15.0℃最低2.3℃)
3月5日:曇り(最高15℃最低8℃)
3月6日:曇りのち雨(最高21.0℃最低9.6℃)
3月7日:曇り(最高10.3℃最低5.8℃)
3月8日:雨のち曇り(最高7.7℃最低5.1℃)

当然ですが、3月2日から近い日ほど予報の精度は高く、的中率が高く見えます。
一方で、予想レンジが長いとはいえ、8日の天気の崩れと気温の下がり具合は予想が難しかったようです。
8日の予想図での寒気の入り込みが、実際は厳しかったようですね。

三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉
-3月第2週のデータ-

▲21年3月10日0:00のデータ

10日のデータの全体を見ると、第1週と比較してかなり寒い空気(‐15℃以下)となるような紫のエリアはもうほぼ見当たりません。因みに薄い青のエリアは―10℃前後です。10日は暖かそうですね。

▲21年3月11日0:00のデータ

11日になると寒気が少し南下してきますね。
とは言え、3月4日や8日のように寒い空気が広がって日本列島を覆うような形ではなく、限定的なエリアでの南下となりそうです。

▲21年3月12日0:00のデータ

12日では寒気が東進していき、また暖気が入ってきます。北日本は引き続きまだまだ寒そうですが、北日本以南は比較的暖かい日になりそうです。
また日本の西を見ると、暖かい空気がドンドン広がってきていることがわかります。

▲21年3月13日0:00のデータ

13日も本州は12日と似たような形です。注目ポイントは九州~四国エリアが12日から更に暖かなエリアが広がってきています。第1週目と比較すると暖かな空気を示す緑色(10℃前後)の空気が増えてきていることがわかります。ここで急に面積が増えてきますね。また、この段階では寒気と暖気がやや”波”となるような位置関係です。

▲21年3月14日0:00のデータ

14日になると暖気がまた広がってきます。ここでの注目ポイントは、第1週では暖気と寒気が波のように入り組んでいたのに対し、日本列島の太平洋沿岸に沿って0℃線が形成されてきている点です。大分、暖気と寒気の入り込みが落ち着いてきていることがわかります。

▲21年3月15日0:00のデータ

15日になると寒気が”舌”のような形で本州を覆います。
14日では”波”がなく平らな形だったのに対し、ここで少しだけ寒気が頑張ってくるようです。

▲21年3月16日0:00のデータ

16日になると日本列島から寒気がいなくなります。北日本も暖気に覆われ、暖かくなりそうです。一方で、朝鮮半島以北に”波”を思わせる寒気がやってきていることも注目ポイントです。

▲21年3月17日0:00のデータ

前日に見えていた寒気の”波”が日本列島に東進してくる為、北陸・北日本を中心に寒気に覆われます。寒気と暖気が入り組んでいる為、天気は悪化傾向となりそうです。

3月第2週の傾向としては
・急に暖かな日が増える
・関東以西&以南では比較的安定した天気になる
といったことが言えそうです。
うーん、やはりキレイな「三寒四温」のような周期が生まれる前に暖かな日が急に続きそうですね。。。
これも地球温暖化の影響なのでしょうか。桜の開花も速そうです。

三寒四温のなぜ。わかりやすくデータで解説。春の言葉
-まとめ-

三寒四温と言う言葉をデータで検証してみました。

春の天気は気持ちがいいですが、
以上のように急変には十分注意して、体調管理には気を付けていきましょう。

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